京都の観月会-日本庭園の愉しみ方
2016.09.22
先日15日は、中秋の名月でしたね。
皆さん、お月見はされましたか?
この時期は、京都のあちらこちらのお寺さんで、観月会が催されています。
私は京都東山にある、智積院(ちしゃくいん)というお寺さんの観月会に行ってきました。
今回のお月見の舞台となるのはこちらです!
お寺の大書院といわれる建物と、江戸時代前期に作られた庭園です。
お庭の様子を簡単に説明しますと、大書院の建物が、池に張り出すように建てられ、池の向こう側には山に見立てられた、大きな築山(つきやま)があります。
築山には、滝や石橋が架けられ、大書院からの景色は、山が迫ってくるような迫力があります。
智積院さんの庭園は、お月見でなくても、一見の価値が十分にある素晴らしいお庭です。
いつもなら、昼間しか拝観することができないので、夜拝観することができるというだけで、わくわくします。
しかも、中秋の名月。
当日は曇りでしたが、雲の切れ間から、お月様が顔を出してくれました。
何百年も前の人も同じ空間から、同じ風景を眺めていたのかと思うと、不思議な気分になります。
空に浮かぶ月も美しいですが、庭の池に映る月は、なんとも幻想的で、風情がありますね。
計算されたかのように、いや、計算されていると思いますが、大書院から、空の月と、池の月を、同時に見ることができました。
お庭があることで、お月見が2倍、3倍も愉しめますね。
日本庭園の奥深さ、魅力を改めて感じる、お月見となりました。
ぜひ、日本庭園でのお月見を愉しんでみてはいかがでしょうか?
意外と奥深い!芝の種類と使い分け
2016.09.15
日ごとに涼しくなり、秋の気配を感じますね。
先日、お施主様のお庭の芝刈りをしてきました。
まだまだ、暑い日でしたよ。
ところで、芝生にも、種類があることを、ご存知でしたか?
芝生とひとくちに言っても、実はたくさんの種類があります。
こちらの芝生は、野芝(のしば)という芝が使われています。
野の芝という名前の通り、丈夫で繁殖力が強く、古くからある芝の種類です。
おそらく、京都の古くからある有名庭園で使われている芝も、野芝が多いと思います。
あまり見ることはないと思いますが、下の写真の穂のようなものが種です。
野芝は種で増えていきます。
他にも住宅では、少し目の細かい、高麗芝(こうらいしば)という芝がよく使われています。
サッカー場では、一年中青々としている、バミューダグラスという芝などをミックスして使うことが多いです。
その他にも、たくさんの種類があり、その適正に合わせて、芝の種類も使い分けていますよ。
芝もこだわれば奥が深いですね。
ちなみに、芝生がメインになっている日本庭園を見に行く時期は、芝生が青々としている時期が、おススメです。
↑夏
↑冬
野芝や高麗芝は、今の時期は、青々としていますが、冬には、写真のように枯れてしまいます。
同じお庭でも、こんなに印象が違います。
枯れた風情がいいという方は別ですが、お庭の見学に行く時期を考えている方は、こういったことも、検討されるといいですよ。
ナツツバキがうまく育たない原因とは?
2016.08.25
庭木は、その特性に合った環境に植えないと、その木、本来の美しい姿を見ることができません。
環境とは、日当たりや気候、地質などのことです。
どの植物にも言えることですが、植物には、向き不向きな環境があります。
その植物に合う環境と手入れを行えば、きれいなお花、新芽の芽吹き、紅葉など、美しい姿を見せてくれます。
逆に、不向きな環境に植えれば、木が枯れたり、お花が咲かなかったりします。
残念ながら、この場所に、この木を植えたいと思っても、環境が合わなければ、うまく育たないことがあるのです。
先日のブログでご紹介した、ナツツバキは、京都の庭園などで見て、我が家にも植えたいという方が多い、人気のある庭木のひとつです。
一方で、我が家に植えたけど、花が咲かない、枯れてしまった、というお話しもよく伺います。
お話しを伺ってみると、植物はみんな、日当たりがいい方が良いと思って、日当たりの良い場所に植えていることが、よくあります。
ナツツバキは、地域にもよりますが、基本的には、半日蔭が好きな植物です。
このように、植物に合う環境は様々です。
ナツツバキに限らず、庭木がなかなか育たない、すぐ枯れてしまう、という時は、その木にあった環境かどうか、チェックしてみて下さい。
お庭をつくる時にも、日当たりだけでなく、その環境にも合った庭木を選ぶことが大事です。
また、植物の特性について、きちんとアドバイスしてくれる造園屋さん、植木屋さんを、選ぶことも大事ですよ。
環境にあった植物を植えれば、元気でキレイな姿を見せてくれますよ。
京都の庭園でよく使われている、沙羅(しゃら)の木とは?
2016.08.14
日本庭園でよく使われている、沙羅の木と言われる木は、本当の沙羅(双樹)の木とは違います。
お施主様から、沙羅の木を庭に植えてほしいとのご依頼が、時々があります。
また、京都のお寺さんでも、沙羅の花を名物にしているところもありますよね。
ですが、日本で一般的に、沙羅(正式には沙羅双樹)と言われる木は、ナツツバキを指すことがほとんどです。
下の写真は、当店で作らせていただいたお庭です。
左端の木が、ナツツバキ(通称:沙羅)です。
この木、よくみかけませんか。
お花が散る姿が、美しいので、人気のある木のひとつです。
では、本当の沙羅双樹の木は、どんな木なのでしょうか?
沙羅双樹の木は、お釈迦様がその木の下で、入滅(にゅうめつ:亡くなった)されたと言われています。
この木は、熱帯の木なので、日本で育てることはなかなか難しいです。
草津市立水生植物園公園みずの森の温室では本物の沙羅双樹が見られるようです。
出典『植物大図説』有明書房
ナツツバキとは、葉っぱも花も全然ちがいますよね。
木の高さは、30m位になるとか、、、
一方で、ナツツバキは、花びらが散るのではなく、花の形のままぽろっと落ちて散るのが特徴です。
その花が、足元に落ちている様子は、儚げ(はかなげ)で美しいですよね。
いつから、沙羅双樹と呼ばれるようになったのかは、わかりませんが、ナツツバキは美しいだけでなく、文学的で宗教的な名前を与えられたため、日本庭園で、よく植えられるようになったのではないでしょうか。
ツツジ・サツキが咲かない時のチェックポイント
2016.08.08
ツツジやサツキの花が咲かないのには、理由があります。
ツツジやサツキが以前よりも、咲かなくなった、というご相談をよくいただきます。
ツツジやサツキは、お庭によく植えられる樹木なので、皆さん悩まれている方が多いです。
お花が満開になったら、嬉しいですよね。
ツツジは特に発色もよく、たくさんの花をつけるので、お庭が一気に華やかになります。
お花が咲くと、気持ちまで華やぎ、この時期を、楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。
逆に、あまり花が咲かなかったら、残念な気持ちになりますよね。
ちなみに、サツキの正式名は、サツキツツジといいます。
つまり、たくさんあるツツジの一種です。
ですので、原因は同じことが多いです。
花が咲かない原因は、いくつかありますが、まずは、お花が終わった後、剪定を行う時期をチェックしてみてください。
これが原因になっていることが多いです。
花は終わると、来年のために花の芽をつけます。
その花芽をつけた後に、剪定を行うと、花芽も切ってしまうので、次の年、あまり花が咲かなくなってしまいます。
その時期は、地域や気候によって違いますので、一概に言うことはできませんが、花が終わったら、早めに剪定することをオススメします。
また、他にも原因がある場合もありますし、個体差もあります。
現状を把握し、ひとつひとつ解決し、より良い状態に持っていくことで、きっと植物は答えてくれます。
原因をひとつずつ解決すれば、来年はきれいなお花が見られますよ。
桜の花が咲かない時のチェックポイント
2016.07.24
先日、知人宅に伺いました。
その際、最近しだれ桜の勢いが落ちて、満開にならなくなったと、相談がありました。
その桜を見ると、この写真のように、桜の根元にたくさんの木が植えられていていましたので、まずは、桜のまわりの樹木を取り外すことをアドバイスしました。
桜の根元まわりの状況
桜は、花は咲かせるために、とてもエネルギーが必要です。
根元まわりに、木やたくさんの植物を植えてしまうと、そちらに栄養分がとられて、肝心の木に栄養がいき届かなくなってしまいます。
その結果、桜の元気がなくなり、花の勢いが落ちる事があるのです。
ただ、原因は1つとは限りません。
他にも原因となりそうなこと、その対処方法についても話しました。
問題をひとつづつ解決し、環境を整えてあげれば、木は徐々に回復します。
お花がきれいに咲くと、自然と気持ちが華やぎ、嬉しくなりますよね。
お友達を呼んで、お花を肴に、楽しいひと時を過ごす、なんてこともいいですね。
桜だけではなく、お花がきれいに咲かない場合、何かしらの原因があります。
それは、木によっても違いますし、環境や手入れに問題がある場合もあります。
その現状を踏まえて、きちんと対処すれば、来年も素敵なお花を見ることができますよ。
京都、夏の特別公開の庭園情報
2016.07.23
今日は、この夏、特別公開される京都の庭園をご紹介いたします。
並河家住宅 並河靖之(なみかわやすゆき)七宝記念館の庭園です。
並河靖之とは、明治から大正期に活躍した、七宝(しっぽう)職人で、並河家住宅とは、靖之の自宅兼工房でした。
記念館に飾られていた、作品はどれも繊細で美しく、多くの外国人が買付けに来たそうです。
その靖之の自宅兼工房の建物と庭園がこの夏公開されています。
作庭は、七代目小川治兵衛(おがわじへい)という、明治から大正にかけて活躍した庭師の初期の作品です。
池が庭の半分くらいを占め、その池に張り出すような形で建物が建てられています。
日本庭園は、通常、鑑賞する場所を決めて、そこからの眺めが、一番美しく見えるように作庭されています。
建物があれば、たいていの場合、建物内からの、眺めを一番大事にします。
こちらの庭も、建物からみた水面との距離感が絶妙で、建物の高さと池の水面の高さが、よく考えられています。
また、もう一つの庭の見どころは、石です。
一般の住宅の庭にしては広いですが、広大な庭ではありません。
そんな空間に、とんでもなく大きな石や灯篭がふんだんに使われています。
ですが、圧迫感はなく、まとまりがあり、そのバランス感覚やセンスに、驚かされます。
日本庭園に限らず、現代の庭でも、庭全体のバランス、見る場所からの見え方を大事にすることは変わりません。
このようなことを、改めて感じる良い機会となりました。
★並河家住宅 並河靖之七宝記念館
場所、公開日などの詳しい情報はこちらです。
京都、省スペースなお庭の施工事例
2016.07.15
いよいよ京都祇園祭の宵々山になりました!
祇園祭の山鉾を見に行きたくてうずうずしているのですが、仕事しています。
今回は、省スペースなお庭の施工事例をご紹介します。
以前に作らせていただいたお庭で、約4m四方の小さな中庭です。
お施主様からは、お持ちのつくばいに合わせてお庭を作って欲しいとのご希望でした。
小さな空間ですが、みずみずしく、奥行き感が出る様に配慮し、お持ちのつくばいにあわせて、周囲の石や木を選び、配置しました。
お庭の作り方しだいで建物も含めた空間が、がらっと変わります。
省スペースでも、庭師の腕にかかったら、素晴らしい世界観が作れます。
また、こちらのお宅のように和風のお家でないと、日本庭園が合わないと思っていらっしゃいませんか。
必ずしも和風のお家でなくても、素材(石や木など)を厳選することで、そのお家に合った、和のテイストを取り入れたお庭を作ることができますよ。
京都、祇園祭のこ豆知識 山鉾巡行は前座!?
2016.07.14
造園屋のブログなんですが、このところ祇園祭のことばかり書いていますね。
鉾町(ほこまち:山鉾をだす町内のこと)の各家では、お客様を招いたり、屏風祭などがあるため、祇園祭前にお庭を整える方が多く、先日、私共もお手入れに伺っておりました。
今回は祇園祭の行事について書かせていただきます。
先日のブログでは、祇園祭の最大の見どころは絢爛豪華な山鉾巡行だと書きました。
ですが、本来、祇園祭の中心をなすのは、山鉾巡行の後に現れる、神様が宿る三基の神輿(みこし)なんです。
神輿が、前祭の後に、八坂神社から御旅所(おたびしょ)といわれる、一時的な社殿に移動する、神幸祭(じんこうさい)。
後祭の後に、御旅所から八坂神社に帰る、還幸祭(かんこうさい)。
この2つの行事が、祇園祭において最も重要な行事となります。
そして、山鉾巡行は、この神幸祭と還幸祭に付随する出し物として、本来は位置づけられているんです。
祇園祭といえば、風流な山鉾と思いがちですが、神輿が主役で、今風にいえば、山鉾巡行は、前座のようなものだったのですね。
この神輿は山鉾巡行の後、夕方から町中を回りますので、こちらも合わせてご覧になるのもよろしいかと思います。
この神輿が移動するルートは、こちらです。(八坂神社さんのHP)
また、御旅所は四条寺町にあり、17日から24日まで、神輿を見ることができますよ。
参考になさってくださいね。
京都、祇園祭のこ豆知識 山鉾巡行の鉾と山の違い
2016.07.13
祇園祭が近いので、これから祇園祭を見に来られる方に、少しでもお役に立てるような“こ”豆知識をご紹介いたします。
ご存知の方も多いと思いますが、祇園祭の山車(だし)には、“鉾(ほこ)”と“山”があります。
それらが町を練り歩く、山鉾巡行が祇園祭の最大の見どころとなっています。
その“鉾”と“山”の主な違いについて、今回は書かせていただきます。
“鉾”は、真木(しんぎ)といわれる中央の木(約25m程の高さ)の先端に金属製の刀や月、菊花などがつけられています。(船鉾、大船鉾、四条傘鉾、綾傘鉾は除く)
また、“鉾”の上には、お囃子の演奏をする人々がぎっしりと乗っており、その重さは重いもので約12トンくらいになるそうです。
一方で、“山”には、“曳山(ひきやま)”と“舁山(かきやま)”があります。
“曳山”は一見、“鉾”にそっくりで、お囃子の方々も乗っていますが、真木の先端には、金属製の物ではなく、松がついています。
“舁山”はもう少し小ぶりで約1.2トン~1.6トンくらいで、下記の図のような形をしています。
“舁山”の上には、松が立てられることが多く、その“山”のテーマに合わせた人形をのせています。
鉾と山の解説:出典『京都祇園祭』京都市観光協会パンフレットより
巡行する山鉾の数は前祭が23基に対して、後祭は10基と少ないので、後祭の方が全体的に小規模な感じですね。
巡行の順番は、毎年同じではなく、7月2日のくじ取り式で決めています。
ただし、33基の山鉾の内、9基はくじ取らずといって、毎年巡行する順番が決まっており、くじを引くことはありません。
毎年、華々しく先頭をつとめる、長刀鉾(なぎなたぼこ)という鉾も、くじ取らずです。
ご参考になさってくださいね。
京都、祇園祭の前祭と後祭
2016.07.12
暑くなってきましたね。
京都は盆地ですので、一層ムシムシとした暑さが体にまとわりついてきます。
ですが、なんといっても京都の最大のイベント、祇園祭がいよいよ来週にせまってまいりました。
京都中(というと、ちょっと語弊がありますね)が活気づき、盛り上がっていますよ!
山鉾(やまぼこ)の組み立てが始まり、祇園祭のお囃子、コンチキチンの音が町を普通に歩いていても聞こえてきます。
菊水鉾真木(しんぎ:鉾の中心の柱)立上げの様子
祇園祭は八坂神社の祭礼として、平安時代より始まったお祭りです。
歴史の詳細は割愛しますが、本来、祇園祭とは7月1日から31日まで行われる様々な行事を総括して、祇園祭といいます。
その中でも、最大の見所は、17日の前祭(さきまつり)と、24日の後祭(あとまつり)の山鉾巡行(やまぼこじゅんこう)です。
山鉾巡行とは、絢爛豪華な山車(だし)が町を練り歩くことです。
ただ、祇園祭の山鉾巡行は、まだ、7月17日だけだと思われている方も多いのではないでしょうか。
平成26年より、17日の前祭(さきまつり)と、24日の後祭(あとまつり)の、2回に分けて、山鉾巡行が行われるようになりました。
当初は現在のように、2回行われていたので、本来の形に戻った、と言った方が正確ですね。
まだ一般には、後祭の存在が知られていないことと、後祭では路上に露店を出すことが禁止されているため(※昨年時点では)、宵山(巡行の前夜祭)の風情をゆっくり楽しむことができますよ。
また、宵山は別名、屏風祭り(びょうぶまつり)とも言われ、こちらも見どころの一つとなっています。
各家のお宝や美しい屏風などを飾ったり、お宅を公開したりという、イベントなども行われます。
そういったことも、調べていくと、祇園祭を2倍、3倍にも楽しむことができますよ。
前祭と後祭では、巡行する山鉾が違います。
ご自分の見たい山鉾を前もってチェックして見に行ってくださいね。
少しだけ、祇園祭の風情をお送りいたします。
室町通り、黒主山前の巨大オブジェ(京都の旦那衆の粋を感じますね)
作品の横には作者からのメッセージが粋ですね。
今日はこのあたりで。
番外編in鳥取 湖畔の素敵なカフェ
2016.07.08
先日、鳥取でお庭の改修工事をさせていただきました。
倉吉、三朝温泉近くの現場です。
京都からは、思ったより近く、打ち合わせ程度であれば日帰りもできますね。
空き時間に、地元の方が紹介して下さった近くのカフェに行ってみることにしました。
東郷湖畔に立つHAKUSENさんという、カフェ+本屋の素敵なお店でした。
湖畔に立つというより、湖に張りだすように設けられた建物で、眺めは抜群です。
既存の建物をリノベーションして、外観はレトロな雰囲気、インテリアはスタイリッシュでシンプルにまとめられています。
一方、家具はレトロな雰囲気でまとめられていて、そのバランスや組み合わせのセンスが絶妙です。
静かな湖面を眺め、何も考えない時間を過ごすには最高の場所です。
ちなみに、遊びに行っていたわけではありませんので。
先代が作らせて頂いたお宅のお庭が倉吉市内に残っており、ご縁があり見せていただきました。
建物は建て替えられたようですが、お庭は残してくださったそうです。
お庭を大事にしてくださって誠にありがとうございます。
鳥取は思っていた以上にご縁のある、癒しの国でした。
鳥取でのお仕事もお待ちしています!
★HAKUSEN
松崎駅徒歩2分くらい(倉吉駅の次の駅)
世界遺産登録5周年、京都の造園屋、岩手県に行く。毛越寺(もうつうじ)の修復工事
2016.07.04
今年6月、岩手県平泉町の金色堂で有名な中尊寺周辺の寺院群が、世界遺産に登録されてから5周年を迎えました。
この6月から7月にかけて、平泉町では記念行事が各地で行われています。
世界遺産登録前に起こった、東日本大震災により平泉町にある毛越寺さんという寺院の庭園が被害を受け、その修復工事に携わらせて頂く機会がありました。
その時のことについて、今回は書かせていただきたいと思います。
毛越寺とは、奥州藤原氏が築いた、平安時代の浄土思想を色濃く残す数少ない庭園として、国の特別史跡、特別名勝(文化財庭園)に指定されています。
他にも、平安時代の浄土思想を反映した庭園としては、京都宇治の平等院が有名ですね。
ただ、毛越寺の庭園はそういった肩書き(?)には関係なく、心が洗われるような本当に美しい庭園です。
震災で最も被害を受けたのは、庭園のシンボル的な存在である、池の中に立つ立石でした。
上記写真中央の立石です。
震災の影響で、高さ約2.5mの立石は30㎝ほど傾いていました。
通常、庭に置かれている石は、地上に見える部分は、その石の高さの3分の2程度で、3分の1は地中に埋まっています。
それによって、石は固定されています。
しかし、毛越寺の立石は、その高さの10分の1程度、30㎝ほどしか地中に埋まっていませんでした。
しかも、建立当時から約25度傾いた状態で立てられており、約4トンもの自重を約800年もの間、保っていたというのです!
その技術の高さには脱帽です。
石の傾きを直すことくらい簡単でしょ、と思われるかもしれませんが、これが意外と大変なんです。
修復にあたっては、池の中なので重機を使えませんし、文化財なので、コンクリートで固めることもできません。
下記の写真のように、人力で修復を行うことになりました。
これには、お寺さんの並々ならぬ努力、ご指導いただいた先生や行政の方々のご協力、関係者が知恵を絞って、取り組んだ結果、修復を成し遂げることができました。
私共は、数多くの庭園の修復を行ってきましたが、今回の修復工事は、震災後の復興のひかりとなるような強い思いが、関係者をつつみ、私共にとっても大変想いの深い仕事になりました。
微力ながら、このような意義深い事業に携わらせていただいたご縁に、大変感謝しております。
当店で携わったこととは関係なく、心から美しいと思える庭園で、個人的にはおおらか、かつ静寂を感じます。
もし、お近くに行く機会があれば、ぜひ毛越寺さんを拝観されることをおすすめいたします。
毛越寺は、平泉駅から徒歩約10分、中尊寺からも車で5分程度です。
ずいぶん前のことになってしまいましたが、その修復工事について、雑誌に取り上げていただきました。
出典『レクサスマガジン2012年3月号』
出典:平泉町作成のパンフレット(作成いただきありがとうございます!)
京都、半夏生(はんげしょう)の花が美しい庭園
2016.07.01
梅雨の蒸し暑い季節になりました。
京都の庭は、今、桔梗(ききょう)、アジサイ、ナツツバキ、ハスなど、お花の季節です。
先日、半夏生(はんげしょう)という花が有名な庭園に行って参りました。
京都祇園にある、建仁寺の中の両足院(りょうそくいん)さんというお寺です。
この白いお花が半夏生です。
半夏生の葉は、はじめは緑色ですが、花が咲き始めると、写真のように周囲の葉も白くなっていきます。
その後、花が終われば、葉も緑色に戻るという、不思議な花です。
ただ、半夏生は繁殖力が強く、根でどんどん増えてしまうので、管理が大変で、日本庭園で使うことは稀です。
それを、あえてこの様に使うのも、おもしろいですね。
両足院の特別公開は7月6日までです。
京都の造園屋、東京のお庭の手入れに行く
2016.06.24
ただいま、実動部隊は東京に行っています。
東京のお盆は、一般的なお盆よりひと月ほど早い7月中旬です。
ですので、お盆前のお手入れに東京のお施主様のお宅に伺っています。
今回のお施主様には、お庭づくりをさせていただいてから、毎年お盆前とお正月前のお手入れに、お声がけ頂いております。
いつも大変よくしていただきまして誠にありがとうございます。
心より感謝申し上げます。
作業後
作業前
作業後
作業中の様子
当店では、関東近郊へも定期的に出張しております。
関東近郊の方、時期は限定されてしまいますが、お庭の意地管理なども、お気軽にお声がけください。
京都、智積院(ちしゃくいん)さんの青葉まつり
2016.06.21
先日、京都の智積院さんの青葉まつりに行って参りました。
智積院さんは、真言宗智山派(ちざんは)の総本山で、大変格式の高い寺院です。
青葉まつりとは、弘法大師空海と中興(ちゅうこう)の祖、覚鑁(かくばん)が、同じ6月にご誕生になられた事を、お祝いする行事です。
緑の美しい時期にちなみ、青葉まつりと名付けられたそうです。
ほら貝の勇ましい音と共に、厳しい修行を終えられた山伏の方々が、また、雅楽が奏でられる中、おごそかに管長様が金堂に入られます。
その後、山伏の方々による、ご祈祷が行われます。
その様子に、大変圧倒されました。
暑い日でしたが、それにも増して、ご祈祷されている、山伏の方々の熱さに、圧倒された日でした。
境内の樹木は美しく整えられ、園路はモミジが青々と繁り、モミジのトンネルのようです。
また、園路脇に沿って植えられた桔梗が咲き始め、金堂奥のあじさいは満開、明王殿脇の蓮池の蓮はつぼみが膨らんでいました。
今の時期の境内がもっとも美しく、華やかな時期ではないでしょうか。
蓮の花が咲きました!
2016.06.18
以前、ブログでご紹介した蓮がついに、咲き始めました。
今年もきれいに咲きました。
こちらは、事務所の美中蓮です。
こちらは、以前お庭をつくらせていただいたお施主様にご寄付した、唐招提寺蓮です。
赤の八重の蓮です。
ひとくちに蓮といっても、形が全く違います。
販売しているわけではないのですが、株分けする時に、お施主様にお分けすることもあります。
蓮にも沢山の種類があるので、代表はもっと色々な種類の蓮を集めたいようです。
今の時期は当店の庭は蓮鉢だらけです、、、
お寺さんにハートの砂紋が!京都のお庭、当店の施工事例
2016.06.13
先日、当店で以前施工させて頂いたお庭を見て参りました。
京都で一般公開している寺院の中庭です。
石の使い方が、先代から受け継いだ、“らしさ”、を感じます。
特に、中庭奥の大きな石の周りに小さな石をゴロゴロとたくさん配している所など。
!!
石の周りの砂紋が、ハート型になっているではありませんか。
偶然なのか、わざとなのかわかりませんが。
お庭に愛着を持って下さっているのかなと、嬉しく思いました。
お庭を大事にして下さり、誠にありがとうございます。
実際にご覧になりたい方は、名前を出す事は控えますが、京都国立博物館近くの、長谷川等伯の国宝の障壁画が有名なお寺の中庭です。
ぜひ、隠れハートを探してみてください。
伝統を受け継ぐ職人について思うこと
2016.06.09
私は、現在は造園屋の事務員となりましたが、今まで京都の様々な伝統を受け継ぐ職人さんに出会ってきました。
造園屋だけでなく、大工さんや、左官屋さん、表具屋さんなど、様々な職人さんに。
その中で、一流の職人とは、技術だけでなく、センス(アート的な感性や粋)を持っている人だなと思いました。
ひと癖(くせ)もふた癖(くせ)もある職人さんが多いのも事実ですが、、
今は、時代が変わってきており、価格競争の中で、そのような職人さんが評価され難い状況になってきています。
とっても残念な状況ではありますが、若い職人たちはどんどん育ち頑張っています。
何とか、日本の伝統的な職人が評価される時代が来るといいなと、密かに思っています。
世界で評価されている、京料理の職人さんのように、、、
このブログを通じて、伝統を受け継ぐ職人たちの仕事を、わかりやすく楽しくご紹介していくことで、少しでも理解や興味を持って頂ければ幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
京都のお庭は剪定(お手入れ)シーズンです!マツの手入れ
2016.06.08
剪定シーズン真っ只中、お施主様のお庭の手入れに、毎日走り回ってます。
剪定とは、樹木の伸びすぎた枝、混みすぎた枝葉などを切り、形を整えて、風通しをよくする、手入れのことをいいます。
↑手入れ後(芽つみ後)
↑手入れ前(芽つみ前)
マツのお手入れは時間がかかります。
その作業の様子は、『マツにセミがとまっている』、と表現されるくらい、動いていないように見えます。
でも、しっかりと手は動かしているんですよ。ご理解くださいませ。
マツのお手入れは、年2回程行うのが一般的です。
今頃に行うのが、伸びてきた新芽をつむ、芽つみと言う手入れで、冬に行うのが、葉むしりと言う手入れです。
芽つみという作業は、写真のように、ぴよーんと伸びた新芽を、今後、どのように仕立てていくか(きれいな形を作っていくか)考えながら、新芽をつんだり、伸ばしたりします。
単純作業のように見えますが、色々考えながら作業しているんですよ。
新芽が伸びたままにしておくとマツの枝があばれて、形が崩れてきます。
元の美しい姿に戻すには、少々時間と労力がかかります。
年2回の手入れする事で、美しく、健康的な状態を維持することができます。
京都の庭園の竹垣の種類とオリジナル竹垣の製作
2016.06.05
今日は竹垣のお話です。
竹垣には、沢山種類があり、お寺さんの名前を付けた竹垣が多くあります。
そのお寺さんで使われていることから、その名称がつけられています。
その中でも、金閣寺垣、竜安寺垣や建仁寺垣などが、特に有名です。
このような有名な竹垣は、寺院の庭園だけでなく、個人のお庭でもよく使われています。
それぞれデザインに違いがありますので、庭園を鑑賞する際には、竹垣の違いを見るのも面白いですね。
出典:『竹垣』吉川功/有明書房
先日、京都市内の庭園の竹垣のやり替え修理をさせていただきました。
お施主さまからは、金閣寺垣や竜安寺垣などは、ありきたりだから、違ったものがいい、とのご要望でした。
ちょっと工夫を凝らし、オリジナルの竹垣の組み方をさせて頂きました。
作業中の様子
作業後
勝手ながら、徳村垣、と命名させていただきます。(笑)
数週間後
写真のように、数週間程度で徐々に青竹の色は退色します。
ですので、清々しく新年を迎えるにあたり竹垣を替えられる方が多いです。
その時期は、青竹が手に入りやすい時期でもあります。
逆に、今の時期に、青竹を入手するのは、少々難しいことでもあります。
代表はじめ、スタッフは庭づくりの好きな者ばかりです。
このような、こだわったご注文を頂くと、特に嬉しく、色々と考えながら、雨の中にもかかわらず、楽しそうに作業していました。
そういった、お客様に恵まれていることに、本当に感謝しています。
お庭に竹垣を設けると、お庭は一気にグレードアップします。
植栽はいいんだけど、何か今のお庭に物足りなさを感じる、もう少し洗練させたいなと考えている方、
竹垣でお庭をご自分らしく、変身させてみませんか。
個性的な石張り敷きの玄関アプローチ
2016.06.02
このところ石の内容ばかりですが、石屋さんではありません。(笑)
先日は、京都市内で玄関アプローチ部分の石張り工事をさせて頂きました。
お施主様より、世間に多く出回っているつるつるピカピカの石ではなく、風合いのある石で張って欲しいとのご希望でした。
また、車で出入りするとのことでしたので、ある程度の厚みのある板石が必要です。
他の業者さんに依頼したそうですが、そのような石が手に入らないとのことで、ご依頼をいただきました。
当社では、年代物の風合いのある板石を多く所有しておりますので、ご希望におこたえすることができました。
年代物の国産の板石は、現在のタイルのように薄くスライスされた板石と違って、厚みがあり車が通る箇所でも十分に耐えられます。
石加工作業中
石張り作業中
施工完了
デザインはお任せ頂いたので、今回も、パズルのように大小の石を組み合わせて、個性的な乱張り敷きの玄関アプローチになりました。
世界に一つだけのデザインで、お庭の石敷きや塀を作ってみませんか。
自分らしいお庭づくりを演出するポイント
2016.05.30
素敵だなと思う日本庭園には、たいてい、植物の中に、アクセントとなる、自然石や加工して作られた石造物などが置かれていませんか。
例えば、景石(景色として据えらた石)、灯篭(とうろう)、つくばい、手水鉢(ちょうずばち)など。
石を置くことで、お庭が引き締まったり、その所有者の考えや個性があらわれるところでもあります。
ですので、石材選びや据え方が、自分らしいお庭づくり、こだわりのお庭づくりのポイントとなります。
ぜひ、自分らしいお庭づくりをされたい方、造園屋さんと相談しながら、ご自分でも積極的に石選びにチャレンジしてみてください。
庭づくりの過程から楽しむ。
これが、庭づくりの醍醐味でもあります。
当店でも、先代から集めてきた様々な石材があり、その中から、一部をご紹介します。
ちょっと変わり種を選んでみました。
◆親子カエルの置物
親の背中に子カエルをのせています。
お庭の点景として、苔とさびがいい具合に出ています。
お客様がまた、帰ってくるという意味の縁起物として、店先に置かれる方もいらっしゃいます。
その場合、カエルの向きには気をつけて下さいね。
約縦20㎝×横20㎝×高さ20㎝
◆矢印の手水鉢
矢印のような形が浮き彫りにされた角形の手水鉢です。
アップ写真でもわかるように、繊細な仕事が施されています。
モダンで個性的なデザインです。
約縦31㎝×横31㎝×高さ92㎝、花崗岩
◆宝塔笠形のつくばい
宝塔の笠(灯篭の頭の笠部分のようなもの)をさかさまにして、中央に穴をあけた、変わり種のつくばいです。
このように、当初の使い方を変えて、つくばいや手水鉢に転用することは古くから行われており、京都の古い庭園でも時々見られます。
通好みのものとして、好まれています。
約縦60㎝×横60㎝×高さ45㎝、花崗岩
◆珪化木(けいかぼく):木の化石
古代に何らかの理由で木が地中に埋まり、木が化石化して、石のように固くなったものです。
庭石と同じように、景石として使います。
約縦80㎝×横55㎝×高さ1m、外国産
ぜひ、石材選びから、 ご自分らしい庭づくりをしてみませんか。
当店では、他にも、石材(つくばい、手水鉢、灯篭、景石など)を多数取り揃えております。
ご希望により、資材だけでもお分けしております。
京都御苑は在来種のタンポポの宝庫です
2016.05.24
この10日間ほど、当社の実動部隊が東北に行っているため、個人的な話で失礼いたします。
先日、京都御苑に行ってきました。
毎週日曜日に、NPO法人都草(みやこぐさ)さんによる、京都御苑歴史散策ツアーが行われており、参加してきました。
長いこと、京都に住んでいながら、御苑内の歴史についてあまり知らなかったので、大変勉強になりました。
植物についても、いろいろと説明していただきました。
京都御苑内では日本古来からある植物を大切にしているそうで、ソメイヨシノなど比較的新しい樹木は植えていないそうです。
草花もまたしかり、タンポポもだそうです。
外来種のタンポポはできるだけ除去しているそうです。
ご存知の方も多いと思いますが、タンポポには在来種と外来種があり、現在では外来種や交配した雑種の方がどんどん多くなってきています。
街中では外来種の方が多くみられるのではないでしょうか。
在来種のタンポポ(京都御苑にて)
外来種のタンポポ(京都御苑にて)
在来種のタンポポと外来種のタンポポの簡単な見分け方は、写真の矢印のついている部分(総苞)の形の違いです。
外来種は総苞(そうほう)が反り返っており、在来種はぴったりくっついています。
後日、ほんの一部ですが、京都御苑内のタンポポを見て回ってきました。
確かに!
白砂の街路で区画された植栽部分では、外来種を見つけることができませんでした。
白砂の街路部分に雑草に紛れて、わずかに外来種のタンポポを見つけることができました。
でも、かわいそうで、お花を摘むことはできませんでしたが、、、