桜の花が咲かない時のチェックポイント
2016.07.24
先日、知人宅に伺いました。
その際、最近しだれ桜の勢いが落ちて、満開にならなくなったと、相談がありました。
その桜を見ると、この写真のように、桜の根元にたくさんの木が植えられていていましたので、まずは、桜のまわりの樹木を取り外すことをアドバイスしました。
桜の根元まわりの状況
桜は、花は咲かせるために、とてもエネルギーが必要です。
根元まわりに、木やたくさんの植物を植えてしまうと、そちらに栄養分がとられて、肝心の木に栄養がいき届かなくなってしまいます。
その結果、桜の元気がなくなり、花の勢いが落ちる事があるのです。
ただ、原因は1つとは限りません。
他にも原因となりそうなこと、その対処方法についても話しました。
問題をひとつづつ解決し、環境を整えてあげれば、木は徐々に回復します。
お花がきれいに咲くと、自然と気持ちが華やぎ、嬉しくなりますよね。
お友達を呼んで、お花を肴に、楽しいひと時を過ごす、なんてこともいいですね。
桜だけではなく、お花がきれいに咲かない場合、何かしらの原因があります。
それは、木によっても違いますし、環境や手入れに問題がある場合もあります。
その現状を踏まえて、きちんと対処すれば、来年も素敵なお花を見ることができますよ。
京都、夏の特別公開の庭園情報
2016.07.23
今日は、この夏、特別公開される京都の庭園をご紹介いたします。
並河家住宅 並河靖之(なみかわやすゆき)七宝記念館の庭園です。
並河靖之とは、明治から大正期に活躍した、七宝(しっぽう)職人で、並河家住宅とは、靖之の自宅兼工房でした。
記念館に飾られていた、作品はどれも繊細で美しく、多くの外国人が買付けに来たそうです。
その靖之の自宅兼工房の建物と庭園がこの夏公開されています。
作庭は、七代目小川治兵衛(おがわじへい)という、明治から大正にかけて活躍した庭師の初期の作品です。
池が庭の半分くらいを占め、その池に張り出すような形で建物が建てられています。
日本庭園は、通常、鑑賞する場所を決めて、そこからの眺めが、一番美しく見えるように作庭されています。
建物があれば、たいていの場合、建物内からの、眺めを一番大事にします。
こちらの庭も、建物からみた水面との距離感が絶妙で、建物の高さと池の水面の高さが、よく考えられています。
また、もう一つの庭の見どころは、石です。
一般の住宅の庭にしては広いですが、広大な庭ではありません。
そんな空間に、とんでもなく大きな石や灯篭がふんだんに使われています。
ですが、圧迫感はなく、まとまりがあり、そのバランス感覚やセンスに、驚かされます。
日本庭園に限らず、現代の庭でも、庭全体のバランス、見る場所からの見え方を大事にすることは変わりません。
このようなことを、改めて感じる良い機会となりました。
★並河家住宅 並河靖之七宝記念館
場所、公開日などの詳しい情報はこちらです。
京都、省スペースなお庭の施工事例
2016.07.15
いよいよ京都祇園祭の宵々山になりました!
祇園祭の山鉾を見に行きたくてうずうずしているのですが、仕事しています。
今回は、省スペースなお庭の施工事例をご紹介します。
以前に作らせていただいたお庭で、約4m四方の小さな中庭です。
お施主様からは、お持ちのつくばいに合わせてお庭を作って欲しいとのご希望でした。
小さな空間ですが、みずみずしく、奥行き感が出る様に配慮し、お持ちのつくばいにあわせて、周囲の石や木を選び、配置しました。
お庭の作り方しだいで建物も含めた空間が、がらっと変わります。
省スペースでも、庭師の腕にかかったら、素晴らしい世界観が作れます。
また、こちらのお宅のように和風のお家でないと、日本庭園が合わないと思っていらっしゃいませんか。
必ずしも和風のお家でなくても、素材(石や木など)を厳選することで、そのお家に合った、和のテイストを取り入れたお庭を作ることができますよ。
京都、祇園祭のこ豆知識 山鉾巡行は前座!?
2016.07.14
造園屋のブログなんですが、このところ祇園祭のことばかり書いていますね。
鉾町(ほこまち:山鉾をだす町内のこと)の各家では、お客様を招いたり、屏風祭などがあるため、祇園祭前にお庭を整える方が多く、先日、私共もお手入れに伺っておりました。
今回は祇園祭の行事について書かせていただきます。
先日のブログでは、祇園祭の最大の見どころは絢爛豪華な山鉾巡行だと書きました。
ですが、本来、祇園祭の中心をなすのは、山鉾巡行の後に現れる、神様が宿る三基の神輿(みこし)なんです。
神輿が、前祭の後に、八坂神社から御旅所(おたびしょ)といわれる、一時的な社殿に移動する、神幸祭(じんこうさい)。
後祭の後に、御旅所から八坂神社に帰る、還幸祭(かんこうさい)。
この2つの行事が、祇園祭において最も重要な行事となります。
そして、山鉾巡行は、この神幸祭と還幸祭に付随する出し物として、本来は位置づけられているんです。
祇園祭といえば、風流な山鉾と思いがちですが、神輿が主役で、今風にいえば、山鉾巡行は、前座のようなものだったのですね。
この神輿は山鉾巡行の後、夕方から町中を回りますので、こちらも合わせてご覧になるのもよろしいかと思います。
この神輿が移動するルートは、こちらです。(八坂神社さんのHP)
また、御旅所は四条寺町にあり、17日から24日まで、神輿を見ることができますよ。
参考になさってくださいね。
京都、祇園祭のこ豆知識 山鉾巡行の鉾と山の違い
2016.07.13
祇園祭が近いので、これから祇園祭を見に来られる方に、少しでもお役に立てるような“こ”豆知識をご紹介いたします。
ご存知の方も多いと思いますが、祇園祭の山車(だし)には、“鉾(ほこ)”と“山”があります。
それらが町を練り歩く、山鉾巡行が祇園祭の最大の見どころとなっています。
その“鉾”と“山”の主な違いについて、今回は書かせていただきます。
“鉾”は、真木(しんぎ)といわれる中央の木(約25m程の高さ)の先端に金属製の刀や月、菊花などがつけられています。(船鉾、大船鉾、四条傘鉾、綾傘鉾は除く)
また、“鉾”の上には、お囃子の演奏をする人々がぎっしりと乗っており、その重さは重いもので約12トンくらいになるそうです。
一方で、“山”には、“曳山(ひきやま)”と“舁山(かきやま)”があります。
“曳山”は一見、“鉾”にそっくりで、お囃子の方々も乗っていますが、真木の先端には、金属製の物ではなく、松がついています。
“舁山”はもう少し小ぶりで約1.2トン~1.6トンくらいで、下記の図のような形をしています。
“舁山”の上には、松が立てられることが多く、その“山”のテーマに合わせた人形をのせています。
鉾と山の解説:出典『京都祇園祭』京都市観光協会パンフレットより
巡行する山鉾の数は前祭が23基に対して、後祭は10基と少ないので、後祭の方が全体的に小規模な感じですね。
巡行の順番は、毎年同じではなく、7月2日のくじ取り式で決めています。
ただし、33基の山鉾の内、9基はくじ取らずといって、毎年巡行する順番が決まっており、くじを引くことはありません。
毎年、華々しく先頭をつとめる、長刀鉾(なぎなたぼこ)という鉾も、くじ取らずです。
ご参考になさってくださいね。
京都、祇園祭の前祭と後祭
2016.07.12
暑くなってきましたね。
京都は盆地ですので、一層ムシムシとした暑さが体にまとわりついてきます。
ですが、なんといっても京都の最大のイベント、祇園祭がいよいよ来週にせまってまいりました。
京都中(というと、ちょっと語弊がありますね)が活気づき、盛り上がっていますよ!
山鉾(やまぼこ)の組み立てが始まり、祇園祭のお囃子、コンチキチンの音が町を普通に歩いていても聞こえてきます。
菊水鉾真木(しんぎ:鉾の中心の柱)立上げの様子
祇園祭は八坂神社の祭礼として、平安時代より始まったお祭りです。
歴史の詳細は割愛しますが、本来、祇園祭とは7月1日から31日まで行われる様々な行事を総括して、祇園祭といいます。
その中でも、最大の見所は、17日の前祭(さきまつり)と、24日の後祭(あとまつり)の山鉾巡行(やまぼこじゅんこう)です。
山鉾巡行とは、絢爛豪華な山車(だし)が町を練り歩くことです。
ただ、祇園祭の山鉾巡行は、まだ、7月17日だけだと思われている方も多いのではないでしょうか。
平成26年より、17日の前祭(さきまつり)と、24日の後祭(あとまつり)の、2回に分けて、山鉾巡行が行われるようになりました。
当初は現在のように、2回行われていたので、本来の形に戻った、と言った方が正確ですね。
まだ一般には、後祭の存在が知られていないことと、後祭では路上に露店を出すことが禁止されているため(※昨年時点では)、宵山(巡行の前夜祭)の風情をゆっくり楽しむことができますよ。
また、宵山は別名、屏風祭り(びょうぶまつり)とも言われ、こちらも見どころの一つとなっています。
各家のお宝や美しい屏風などを飾ったり、お宅を公開したりという、イベントなども行われます。
そういったことも、調べていくと、祇園祭を2倍、3倍にも楽しむことができますよ。
前祭と後祭では、巡行する山鉾が違います。
ご自分の見たい山鉾を前もってチェックして見に行ってくださいね。
少しだけ、祇園祭の風情をお送りいたします。
室町通り、黒主山前の巨大オブジェ(京都の旦那衆の粋を感じますね)
作品の横には作者からのメッセージが粋ですね。
今日はこのあたりで。
番外編in鳥取 湖畔の素敵なカフェ
2016.07.08
先日、鳥取でお庭の改修工事をさせていただきました。
倉吉、三朝温泉近くの現場です。
京都からは、思ったより近く、打ち合わせ程度であれば日帰りもできますね。
空き時間に、地元の方が紹介して下さった近くのカフェに行ってみることにしました。
東郷湖畔に立つHAKUSENさんという、カフェ+本屋の素敵なお店でした。
湖畔に立つというより、湖に張りだすように設けられた建物で、眺めは抜群です。
既存の建物をリノベーションして、外観はレトロな雰囲気、インテリアはスタイリッシュでシンプルにまとめられています。
一方、家具はレトロな雰囲気でまとめられていて、そのバランスや組み合わせのセンスが絶妙です。
静かな湖面を眺め、何も考えない時間を過ごすには最高の場所です。
ちなみに、遊びに行っていたわけではありませんので。
先代が作らせて頂いたお宅のお庭が倉吉市内に残っており、ご縁があり見せていただきました。
建物は建て替えられたようですが、お庭は残してくださったそうです。
お庭を大事にしてくださって誠にありがとうございます。
鳥取は思っていた以上にご縁のある、癒しの国でした。
鳥取でのお仕事もお待ちしています!
★HAKUSEN
松崎駅徒歩2分くらい(倉吉駅の次の駅)
世界遺産登録5周年、京都の造園屋、岩手県に行く。毛越寺(もうつうじ)の修復工事
2016.07.04
今年6月、岩手県平泉町の金色堂で有名な中尊寺周辺の寺院群が、世界遺産に登録されてから5周年を迎えました。
この6月から7月にかけて、平泉町では記念行事が各地で行われています。
世界遺産登録前に起こった、東日本大震災により平泉町にある毛越寺さんという寺院の庭園が被害を受け、その修復工事に携わらせて頂く機会がありました。
その時のことについて、今回は書かせていただきたいと思います。
毛越寺とは、奥州藤原氏が築いた、平安時代の浄土思想を色濃く残す数少ない庭園として、国の特別史跡、特別名勝(文化財庭園)に指定されています。
他にも、平安時代の浄土思想を反映した庭園としては、京都宇治の平等院が有名ですね。
ただ、毛越寺の庭園はそういった肩書き(?)には関係なく、心が洗われるような本当に美しい庭園です。
震災で最も被害を受けたのは、庭園のシンボル的な存在である、池の中に立つ立石でした。
上記写真中央の立石です。
震災の影響で、高さ約2.5mの立石は30㎝ほど傾いていました。
通常、庭に置かれている石は、地上に見える部分は、その石の高さの3分の2程度で、3分の1は地中に埋まっています。
それによって、石は固定されています。
しかし、毛越寺の立石は、その高さの10分の1程度、30㎝ほどしか地中に埋まっていませんでした。
しかも、建立当時から約25度傾いた状態で立てられており、約4トンもの自重を約800年もの間、保っていたというのです!
その技術の高さには脱帽です。
石の傾きを直すことくらい簡単でしょ、と思われるかもしれませんが、これが意外と大変なんです。
修復にあたっては、池の中なので重機を使えませんし、文化財なので、コンクリートで固めることもできません。
下記の写真のように、人力で修復を行うことになりました。
これには、お寺さんの並々ならぬ努力、ご指導いただいた先生や行政の方々のご協力、関係者が知恵を絞って、取り組んだ結果、修復を成し遂げることができました。
私共は、数多くの庭園の修復を行ってきましたが、今回の修復工事は、震災後の復興のひかりとなるような強い思いが、関係者をつつみ、私共にとっても大変想いの深い仕事になりました。
微力ながら、このような意義深い事業に携わらせていただいたご縁に、大変感謝しております。
当店で携わったこととは関係なく、心から美しいと思える庭園で、個人的にはおおらか、かつ静寂を感じます。
もし、お近くに行く機会があれば、ぜひ毛越寺さんを拝観されることをおすすめいたします。
毛越寺は、平泉駅から徒歩約10分、中尊寺からも車で5分程度です。
ずいぶん前のことになってしまいましたが、その修復工事について、雑誌に取り上げていただきました。
出典『レクサスマガジン2012年3月号』
出典:平泉町作成のパンフレット(作成いただきありがとうございます!)
京都、半夏生(はんげしょう)の花が美しい庭園
2016.07.01
梅雨の蒸し暑い季節になりました。
京都の庭は、今、桔梗(ききょう)、アジサイ、ナツツバキ、ハスなど、お花の季節です。
先日、半夏生(はんげしょう)という花が有名な庭園に行って参りました。
京都祇園にある、建仁寺の中の両足院(りょうそくいん)さんというお寺です。
この白いお花が半夏生です。
半夏生の葉は、はじめは緑色ですが、花が咲き始めると、写真のように周囲の葉も白くなっていきます。
その後、花が終われば、葉も緑色に戻るという、不思議な花です。
ただ、半夏生は繁殖力が強く、根でどんどん増えてしまうので、管理が大変で、日本庭園で使うことは稀です。
それを、あえてこの様に使うのも、おもしろいですね。
両足院の特別公開は7月6日までです。