庭木の王様!松の冬のお手入れと鑑賞ポイント
2017.01.17
こんにちは。庭匠植清(にわしょううえせい)です。
京都は、ここ数日、雪が降り続き、比叡山は真っ白です。
今回は、“葉むしり”について、書きたいと思います。
葉むしり前の松の様子です。
枯れてる!と思われるかもしれませんが、枯れている訳ではありませんよ。
茶色く変色しているのは、去年の葉です。
生き生きとして見えませんか。
この木が生きてきた時間を感じ、美しいなと思います。
それが鑑賞のポイントなので、葉を間引くことで、それらをみせているのです。
どう見せるかを考えながら、庭師は葉むしりの作業をします。
あなたはもう庭ツウです!
意外と奥深い!芝の種類と使い分け
2016.09.15
日ごとに涼しくなり、秋の気配を感じますね。
先日、お施主様のお庭の芝刈りをしてきました。
まだまだ、暑い日でしたよ。
ところで、芝生にも、種類があることを、ご存知でしたか?
芝生とひとくちに言っても、実はたくさんの種類があります。
こちらの芝生は、野芝(のしば)という芝が使われています。
野の芝という名前の通り、丈夫で繁殖力が強く、古くからある芝の種類です。
おそらく、京都の古くからある有名庭園で使われている芝も、野芝が多いと思います。
あまり見ることはないと思いますが、下の写真の穂のようなものが種です。
野芝は種で増えていきます。
他にも住宅では、少し目の細かい、高麗芝(こうらいしば)という芝がよく使われています。
サッカー場では、一年中青々としている、バミューダグラスという芝などをミックスして使うことが多いです。
その他にも、たくさんの種類があり、その適正に合わせて、芝の種類も使い分けていますよ。
芝もこだわれば奥が深いですね。
ちなみに、芝生がメインになっている日本庭園を見に行く時期は、芝生が青々としている時期が、おススメです。
↑夏
↑冬
野芝や高麗芝は、今の時期は、青々としていますが、冬には、写真のように枯れてしまいます。
同じお庭でも、こんなに印象が違います。
枯れた風情がいいという方は別ですが、お庭の見学に行く時期を考えている方は、こういったことも、検討されるといいですよ。
ナツツバキがうまく育たない原因とは?
2016.08.25
庭木は、その特性に合った環境に植えないと、その木、本来の美しい姿を見ることができません。
環境とは、日当たりや気候、地質などのことです。
どの植物にも言えることですが、植物には、向き不向きな環境があります。
その植物に合う環境と手入れを行えば、きれいなお花、新芽の芽吹き、紅葉など、美しい姿を見せてくれます。
逆に、不向きな環境に植えれば、木が枯れたり、お花が咲かなかったりします。
残念ながら、この場所に、この木を植えたいと思っても、環境が合わなければ、うまく育たないことがあるのです。
先日のブログでご紹介した、ナツツバキは、京都の庭園などで見て、我が家にも植えたいという方が多い、人気のある庭木のひとつです。
一方で、我が家に植えたけど、花が咲かない、枯れてしまった、というお話しもよく伺います。
お話しを伺ってみると、植物はみんな、日当たりがいい方が良いと思って、日当たりの良い場所に植えていることが、よくあります。
ナツツバキは、地域にもよりますが、基本的には、半日蔭が好きな植物です。
このように、植物に合う環境は様々です。
ナツツバキに限らず、庭木がなかなか育たない、すぐ枯れてしまう、という時は、その木にあった環境かどうか、チェックしてみて下さい。
お庭をつくる時にも、日当たりだけでなく、その環境にも合った庭木を選ぶことが大事です。
また、植物の特性について、きちんとアドバイスしてくれる造園屋さん、植木屋さんを、選ぶことも大事ですよ。
環境にあった植物を植えれば、元気でキレイな姿を見せてくれますよ。
京都の庭園でよく使われている、沙羅(しゃら)の木とは?
2016.08.14
日本庭園でよく使われている、沙羅の木と言われる木は、本当の沙羅(双樹)の木とは違います。
お施主様から、沙羅の木を庭に植えてほしいとのご依頼が、時々があります。
また、京都のお寺さんでも、沙羅の花を名物にしているところもありますよね。
ですが、日本で一般的に、沙羅(正式には沙羅双樹)と言われる木は、ナツツバキを指すことがほとんどです。
下の写真は、当店で作らせていただいたお庭です。
左端の木が、ナツツバキ(通称:沙羅)です。
この木、よくみかけませんか。
お花が散る姿が、美しいので、人気のある木のひとつです。
では、本当の沙羅双樹の木は、どんな木なのでしょうか?
沙羅双樹の木は、お釈迦様がその木の下で、入滅(にゅうめつ:亡くなった)されたと言われています。
この木は、熱帯の木なので、日本で育てることはなかなか難しいです。
草津市立水生植物園公園みずの森の温室では本物の沙羅双樹が見られるようです。
出典『植物大図説』有明書房
ナツツバキとは、葉っぱも花も全然ちがいますよね。
木の高さは、30m位になるとか、、、
一方で、ナツツバキは、花びらが散るのではなく、花の形のままぽろっと落ちて散るのが特徴です。
その花が、足元に落ちている様子は、儚げ(はかなげ)で美しいですよね。
いつから、沙羅双樹と呼ばれるようになったのかは、わかりませんが、ナツツバキは美しいだけでなく、文学的で宗教的な名前を与えられたため、日本庭園で、よく植えられるようになったのではないでしょうか。
ツツジ・サツキが咲かない時のチェックポイント
2016.08.08
ツツジやサツキの花が咲かないのには、理由があります。
ツツジやサツキが以前よりも、咲かなくなった、というご相談をよくいただきます。
ツツジやサツキは、お庭によく植えられる樹木なので、皆さん悩まれている方が多いです。
お花が満開になったら、嬉しいですよね。
ツツジは特に発色もよく、たくさんの花をつけるので、お庭が一気に華やかになります。
お花が咲くと、気持ちまで華やぎ、この時期を、楽しみにされている方も多いのではないでしょうか。
逆に、あまり花が咲かなかったら、残念な気持ちになりますよね。
ちなみに、サツキの正式名は、サツキツツジといいます。
つまり、たくさんあるツツジの一種です。
ですので、原因は同じことが多いです。
花が咲かない原因は、いくつかありますが、まずは、お花が終わった後、剪定を行う時期をチェックしてみてください。
これが原因になっていることが多いです。
花は終わると、来年のために花の芽をつけます。
その花芽をつけた後に、剪定を行うと、花芽も切ってしまうので、次の年、あまり花が咲かなくなってしまいます。
その時期は、地域や気候によって違いますので、一概に言うことはできませんが、花が終わったら、早めに剪定することをオススメします。
また、他にも原因がある場合もありますし、個体差もあります。
現状を把握し、ひとつひとつ解決し、より良い状態に持っていくことで、きっと植物は答えてくれます。
原因をひとつずつ解決すれば、来年はきれいなお花が見られますよ。
桜の花が咲かない時のチェックポイント
2016.07.24
先日、知人宅に伺いました。
その際、最近しだれ桜の勢いが落ちて、満開にならなくなったと、相談がありました。
その桜を見ると、この写真のように、桜の根元にたくさんの木が植えられていていましたので、まずは、桜のまわりの樹木を取り外すことをアドバイスしました。
桜の根元まわりの状況
桜は、花は咲かせるために、とてもエネルギーが必要です。
根元まわりに、木やたくさんの植物を植えてしまうと、そちらに栄養分がとられて、肝心の木に栄養がいき届かなくなってしまいます。
その結果、桜の元気がなくなり、花の勢いが落ちる事があるのです。
ただ、原因は1つとは限りません。
他にも原因となりそうなこと、その対処方法についても話しました。
問題をひとつづつ解決し、環境を整えてあげれば、木は徐々に回復します。
お花がきれいに咲くと、自然と気持ちが華やぎ、嬉しくなりますよね。
お友達を呼んで、お花を肴に、楽しいひと時を過ごす、なんてこともいいですね。
桜だけではなく、お花がきれいに咲かない場合、何かしらの原因があります。
それは、木によっても違いますし、環境や手入れに問題がある場合もあります。
その現状を踏まえて、きちんと対処すれば、来年も素敵なお花を見ることができますよ。
池の護岸の種類と修理
2016.04.10
今回は池のお話です。
池の周囲にある岸の崩れを防ぐ役割を果たしている部分を護岸といいます。
護岸の形式は色々あり、石積みだったり、木の杭が連続的に打ち込まれていたり(乱杭)、洲浜状になっていたり、それ以外にも様々な形式があります。
また、それらを組み合わせて、池周りを構成することもあります。
最もよく見る形が石積みの護岸ではないでしょうか。
岩波日本庭園辞典より
石積み護岸は比較的丈夫ですが、永久的なものではありません。
池お持ちの方、一度池のまわりを観察してみてください。
・崩れかかっていたり
・池に水が溜まりにくかったり
・池のまわりの地面がぐちゃぐちゃするなという事はありませんか?
もしかすると、護岸から水が漏れているかもしれません。
先日、ある庭園の池の護岸から水漏れがあり、水が溜まりにくいとのことで、伝統的な工法で修理を行いました。
まず、石組みを解体して、さらに護岸周囲の緩くなっている土も取り除きます。
そして、もとあったように石積みをしながら、石積みの背面に、粘土等を、ひたすら突き固めて石を固定していきます。
この粘土層が、石積みを固定する役割と水止めの両方の役割を果たします。
実際には、このような感じです。
そして、石積みの目地をひとつひとつ丁寧に埋めていきます。
今回は、文化財の庭園でしたので、上記のような伝統的な工法で行いましたが、現在では石積みをモルタルやコンクリートで固定することが一般的です。
池の護岸ひとつにもいろいろな種類があり、職人の技、手間暇がかかっています。
ぜひ、日本庭園を鑑賞する際、護岸にも注目してみて下さい。